『母と私』シリーズについて
『母と私』シリーズは、認知症を発症した母との12年間の記録です。
診断された日の戸惑いから、最期のお別れまで。
正解のない道の中で、それでも私が選んできた道のりを綴っています。
誰かの心に寄り添い、大切な人との時間を見つめ直すきっかけになればと思います。
そして同じ場所にいる方の心に、「一人じゃないよ」と、そっと届いたなら嬉しいです。
ある日、母が「認知症」と診断されました。
おかしな症状が続き、何度も病院へ。行くだけでもひと苦労で、母はいつも「どこも悪くない!なんでそんな検査を受けなきゃいけないの?」と抵抗していました。
72歳で受けた診断結果は、やはりショックで「信じたくない」という気持ちが一番に立ちました。身体はとっても元気、それがショックな気持ちを助長しました。そして、動けるゆえの不安…。
遠方で暮らしていた祖母も認知症を経験していたので、どういう病気なのかは知っていました。治らない、特効薬はない、進行すれば元には戻れない・・・頭ではわかっていたのに、受け止めきれませんでした。
診断のころ、父は長期入院中。私は経済的にも心にも余裕がなく、母の変化を抱えきれない状態でした。
身近に同じ経験をしている人もいなかったので、誰にも相談できずにいました。
「一緒に暮らしたほうがいいんじゃない?」
そう言われるのが怖かったのだと思います。周囲の目を気にして「そうしなくちゃならないのかな」と思いながらも、結局その選択はしませんでした。
それが正解だったのかは、今でもわかりません。
でも、今の私があるのはその選択をしなかったからかもしれない。正解なんて、最初からないのかもしれません。
できることはしなくては・・・その思いから、兄弟と協力して毎週のように実家へ行き、母に会ったり、外へ連れ出したり、関連の本を読んでみたり。「寂しさが進行を早める」という知識もあり、焦りながらも「なんとか進行を遅らせたい」と必死でした。
いま思うと、母の気持ちを思い遣る余裕はありませんでした。診断を受けてショックだったのは母。私は今後どうしたらいいかの思いで頭がいっぱいでした。
とは言え父の入院中、ある意味有意義に、自由に過ごしていた母の生活を、認知症と診断されたからと言ってすぐに変えるなどできませんでした。
母が認知症と診断されたあの日。
その時に抱いた「信じたくない」という気持ちは、今でも鮮明に残っています。
この出来事は、私の人生の大きな分岐点でした。
つづく…

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