母が認知症を発症してから10年が経っていますので、記憶があいまいな部分もありますが、ご容赦ください。
最初に見られた変化は「お財布紛失事件」でした。
奇しくもそれは、私が誕生日にプレゼントしたワインレッドの長財布。金運が良さそうだと思って選んだものでしたが、その財布が何度も行方不明になるのです。
「財布がなくってさー」
「財布がないんだけど、あんた持って帰ってない?」
そんな電話が一日に何度もかかってきます。もちろん悪気はありません。認知症がなせることです。
結局は家の中から見つかるのですが、置かれている場所が驚くようなところばかり。タンスの奥深くにしまわれていたり、銀行カードが冷蔵庫の裏に貼りついていたり、靴下の中から千円札が出てきたり…。だんだん隠し場所も高度になっていきました。
弟と「これゲーム?」「俺ら試されてる?」と笑ったりもしたものです。
特にお財布、お金関係に集中していたのは、母が一番気にしていたのが「お金」だったからだと思います。
父の事業失敗から家計はずっと苦しく、母は働きづめで家を支えてきました。子供の頃の記憶の母の口癖は「うちにはお金ないからね」でした。そして今思えば、母は家計管理がとても苦手でした。計算が…。お金がないのにどんぶり勘定💧
一日に何度もかかってくる電話に、私も感情的になってしまったり、ついきつい言葉を投げてしまったこともよくありました。
頭ではわかっていても、心がついていかない。本当にしんどい時期でした。
当時の母は、自分が「おかしくなっている」ことを自覚していたように思います。そのせいか、イライラしたり不安そうに見えることもよくありました。
本人が一番つらかったのかもしれません。けれど、その感情さえ、忘れてしまうのです。
つづく…

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